2014年10月30日木曜日

Ride the Lightning vol.15

Ride the Lightning vol.15に行ってきました。このイベントは転職活動時代に知り合った方が、「絶対あなたにあってると思う」とオススメしてくれたものなんですが、どんなものなのかはまったく想像がつかず、デザインについて何かLTをやる場なんだなという風にしか思っていませんでした。


午後7時開始というもので、開始に間に合わないと貴重なプレゼンを見逃すと思い、タクシーを拾って西麻布のAQオフィスに向かったのですが、まったくの危惧でした。(場所がわかりづらかったのでタクシー拾ったことはよかったですが)このLTはプレゼンの内容も良かったのですが、ネットワーキングをするために集まる人が多く、7時開始といっても1時間ほどはビール飲みながらみんなでお話をしたり名刺交換をしたり。あとプレゼンとプレゼンの合間にも周りの人とお話したり仲良くなったりと親睦がかなり重要な目的のようです。

私は人見知り(だと自分では思っている)なのであまりたくさんの人と話してはいないですが、イギリスのデザイン会社の人で東京に訪問中でトレンドを調べている人、大手に勤務しながら副業で起業するためにエンジニアとデザイナーをリクルートしている人、既に起業しちゃって成功してる人、デザイン会社のフロントエンジニア、ニューヨークのPRATTから交換留学に来ている学生さん、AQの社員の方々など、様々な人がいて面白かったです。

ビールがあったりスナックがあったり

LT中もみんな楽しんで聞いてるだけで、ノートPCでガチャガチャ議事録を取っている人は誰もいませんでした。メモを取る人もいなかったです。やっぱり欧米と日本では聞き手が求めているものが違うんだなと思いました。日本は内容重視、欧米はスピーカーのエネルギーや表情といったインタラクションを重視するのかな、とも思いました。メモは取ってなかったのですが、覚えている内容でLTの内容をまとめてみました。

Ben Watanabe: 96 problems: iteration before conception

みんなどれだけパソコンの前に座っている?デザイナーの場合平均7時間半だそう。でもそのような生活を続けると体に無理が来ちゃう。これは問題(problem)。20分おきに起き上がれと促してくれるアプリがある。これが解決。このように小さい問題を並べて、共感する人が投票することで解決につなげるというコンセプトをホームページを作ってみた。それが96 problemsである。

例えば松屋とかで、食べながらiPhoneの画面を眺めたかった。カップの横に立ててみたけどよく倒れた。そのためのホルダーも売ってあるけど、そのためだけにホルダーを持ち歩くのもばかばかしい。そこで、キーホルダーにiPhoneを立てられるものを合体させてみた。イヤホンも収納できる。そうして小さい問題が一つ解決できた。

Takashi Fujimoto: Street Academy

ストリートアカデミーを立ち上げた話。スピーカーの経歴は華やかで、スタンフォードでMBA修了、6 figure(1千万以上)の給料をもらっていた。でもストリートアカデミーを立ち上げるべく、全て捨ててゼロからはじめた。最初は大変だった。

日本にはカルチャースクールというものがある。しかし利用者は50代以上が50%以上をしめていて、もっと場所や時間の制約を越えて自由に教えたり学んだりできないかと考えた。それで立ち上げたのがストリートアカデミー。誰でも先生になれるし、場所も自由。銭湯でマーケティング講座を開くことだってできる。

今はサイトのリニューアルに90%以上のリソースを使っているが、訳のわからないPRの効果で急にアクセスが伸びることがある。PRやマーケティング、また運を無視してはいけない。運は自分が取りにいくもの。

Mathieu Mayer: CSShapes

ChromeでCSS Shapesというものが使える。これがかなりイケているので紹介したい。例えば、サッカーボールの画像があって、その隣にテキストが来るとする。サッカーボールは丸いので、丸いマージンを置いてテキストを配置したい。そういうことができる。それがshape-outside。逆に画像の中を埋める場合はshape-inside。その形を調整できるツールもあって、開発経験がなくても簡単に領域の指定ができて便利。

例えばこういうこともできる。これはキテるし、これからのウェブデザインを変えてしまうと思う。

Naoji Taniguchi: Tokyo Mobile VR Map

バイクが好き。坂道が嫌。バーチャルリアリティに興味がある。ということで、地図を高さ情報付きで見ることができるオキュラスリフトのアプリケーションを作ってみた。その体験とデモ。


ストリートアカデミーは、私もHTML5講座を受けたりと活用させていただいています。良い講座の作り方の話かなと思ったら、そのサービスを作った人が来てトークしてるということでびっくりしました。東京の業界のナードやギークがこんなところに集まっていたかと思うともっと早くから参加すれば良かったとも思えました。これからも個人的なネットワーキングとナレッジゲットのために積極的に参加しようと思います。

2014年10月19日日曜日

iOS 8/Swift エンジニア勉強会@ヤフー

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iOS 8/Swift エンジニア勉強会@ヤフーのスタッフをやりました。社内ではほぼ毎週iOSやApple製品についての新しいトピックスだとか失敗・成功事例、個人的に研究しているテーマの発表まで、活発な発表と議論が行われていて、私もたまにこの集まりに参加したり発表をしたりしているのですが、いつも和気あいあい楽しんでいていいなぁと思っていました。今回はその場でたまったノウハウなどを社外の人々とも共有して交流をしようということで、大きい規模の勉強会が企画され、一度は台風で延期になったものの、昨日無事勉強会を行うことができました。

私はUstream配信を担当しました。

主催の概要と当日のプログラムはconnpassで確認できますし、どんな雰囲気だったのかを知りたいのであれば小川さんがまとめてくれたtogetterを見ると良いと思います。勉強会の実況はUstreamでも配信されていて、そのアーカイブも公開されています( 社員セッション / LT )。私も発表内容を簡単にまとめてみました。

ヤフー社員のセッション

iOS 8 / Swift 概要 平松 亮介 資料
この勉強会のキーパーソンの平松さんによる概要説明。ヤフーでは社員がWWDCに行ってきたり、社内で活発に情報交換をしていた。iOS6から7の時はデザインが一新されたが、今度はアプリ連携・UX向上・画面サイズ追加といった変更が主になっている。App ExtensionやInteractive Notificationなどの機能追加について。Swiftとその文法の簡単な紹介。Swiftはシンプルで堅牢に書けるので個人的にはとても気に入っている。

Xcode6の新機能 佐藤 新悟 資料
Xcode6でPlayground, 非同期テスト, Interface Builderのような機能が追加された。Debug View Hierarchyを使ってViewの階層構造を3Dで表示することができたり、自前ViewクラスをInterface Builderで描画できる。それぞれの機能に対して、実際Xcode6を使ったデモ。

既存アプリのiOS8対応 西 磨翁
iOS8の対応と言うと、1. 動くようにする、2. iOS8独自の機能に対応する、3. 6や6 plusのサイズに対応する、といった三つのことがあると考えていて、ヤフオク!は1と2に対応した。実際の事例をあげて、iOS8に対応するときに気をつけないといけないことを説明。例えばHeightとWidthの関係を間違って理解してると、レイアウトが崩れるなど。Widget機能を使った入札に対応するなど、新しいフィーチャーを積極的に取り入れた。

Extension(Widget) 田邉 裕貴 資料
Widgetは使い勝手が良く、場所的にも一等地。今日はWidgetを作ったことがない人でもわかるような内容。まずはHello worldを出してみる。プロジェクトを作成して、Today Extensionを追加することが簡単にWidgetを作ることができるが、詰まるところが多いのでその内容のシェアとTipsを紹介。Widgetでやってはいけないこととしてはキーボードの使用とスクロールビューの配置などがある。

Extension(Document Provider)大西 智也 資料
Document Providerで、自分のアプリに対して他のアプリがファイル操作をすることができる。Import/Export/Open/Moveの詳しい紹介。やり方はApplication ExtensionでDocument Providerを追加。自分のアプリから、画像をDropBoxにアップロードするサンプルアプリの紹介。

オトナのHomeKit 羽田 健太郎 資料
HomeKitはスマート家電とiPhoneを連携させるためのインターフェース。iPhone連携する家電になるためにはMFi(Made for iPhone)というライセンスを買わないといけない。Googleもnearbyで対抗しようとしている。実際に天気ステーションだとか、スマート鍵、スマート電球などのプロダクトが連携をしている。いい感じのムードを作る「Adult Key」のデモ。でも実際はラジオボタンが動くだけ。HomeKitで開発をやるために、経費で家を買いたいと言ってみましょうという提案。でも本人は言えてないみたい。

虚数は作れる!Swiftで学ぶ複素数 佐野 岳人 資料 / サンプルコード
学校で複素数について習うときに、仮定に基づいている概念が実際の演算に使われたりしてモヤモヤしていた。信じることを前提にしなくても、実際虚数が作れることをSwiftで試演。Swiftでシンプルに書けて、UIViewで表示できる。見てると美しい。まさに「神のクレープ」

シークレットセッション 佐々木 海
シークレットにつき内容は公開しない。

Lightening Talk

Swiftでアプリを開発した体験記 杉上さん 資料
知的好奇心を刺激するニュースアプリ、Sioriをリリースした。その開発の振り返り。Swift発表を見て、アップルの本気度を感じた。プロジェクトの半ばで、Swiftの全面採用が決まった。Swiftの良いところはやりたいことがよく書けて気持ちいいところ。

オプショナル型 長谷川智希さん 資料
Swiftで、Stringにnilは入らなくなった。nilも文字列も入れたい場合はオプショナル型として宣言しないといけない。その場合Optional<String>をつける。それを省略したのが?である。元の型として使う場合アンラップし、それを強制的にやる場合につけるのが!である。その他にも色々なアンラップの形がある。なんとなくに?や!をつけるのではなくて、きちんとロジックを理解した上でつけないと混乱してしまう。

SceneKit dsgarageさん
3Dモデルのためのキットの紹介。今まで主にUnityでゲームの開発をしてきたが、SceneKit、SpriteKitなどの便利なキットを使うと3Dモデリングが簡単になる。大変なC++実装をするより、ゲーム開発においてこのようなキットを使うと良いはず。

swift-jsonについて dankogaiさん 資料 / ソースコード
swift-JSONではなくswift-jsonである。SwiftでJsonの取り扱いを簡単にできるハンドラー。書き方もSwift風で読みやすく、タイプチェックやエラーハンドリングも簡単。

Flat Designの裏にあるもの nakajijapanさん 資料
iOS6まではスキュモだったが、iOS7ではフラット化。ただ、Appleは自分たちのデザインをフラットデザインとは呼んでいない。あくまでもiOSのためのデザイン、コンテンツを重視したデザインとしている。デザインは人々の進化や習熟度によって変わってきた。デザイン思想としてMaterial Honesty, Minimalismを紹介。「Material Honesty」という考え方は、工業製品は素材を重視し、装飾ではなく機能に従ったデザインをすべきというもの。

カスタムキーボード niwatakoさん
外部接続のデータスキャン機構をSDKを使わず他のアプリに提供するために、カスタムキーボードを使ってみた。カスタムキーボードでバーコードを入力し、その結果をSafariに渡して検索するアプリの紹介。カスタムキーボードでゲームするなど、無限の可能性があると思う。ただAppleの審査が通るかどうかはまだわからない。

参加してくださったみなさん、ありがとうございました。そしてスタッフのみなさん、お疲れ様でした。また社内・社外で面白い話が聞けることを楽しみにしています。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

2014年10月15日水曜日

UI Crunch #1

スクーの講義、【現役クリエイターから学ぶUIデザイン講座】UI Crunch #1 渋谷ヒカリエから生放送!を受講してみました。実際のイベントは渋谷ヒカリエで行われていて、その実況が生中継されるという形でした。DeNAとGoodpatchといった、IT業界のUIデザインを牽引しているといっても過言ではない両会社のコラボということで、みんなの反応もとても熱く、70人の定員があっという間に埋まる盛況っぷりです。

内容としては、プロダクトのゴールとは何か?といったモノづくりの本質を問うような発表から、iOS8対応のTipsといった具体的で実務に役立つものまで幅広く、様々なトピックスについて考えられる機会になって良かったと思います。これからもUICrunchは月一度行われるらしいので、今後の話題の広がりも楽しみです。それぞれの発表内容を簡単に整理してみました。

開発現場におけるデザイナーの生存戦略 - 坪田 朋 UI Designer(DeNA)

デザイナー不要論が浮上し、みんながざわついている。確かにBootStrapのようなプロトタイプが簡単に作れるフレームワークや、クラウドソーシングの活用が明らかに増えていて、デザイナーの既存の仕事が奪われている。しかし、プロダクト全体のことを考えられるデザイナーの希少価値は依然として高い。代替可能なCSSを書くとかグラフィックを作成するデザイナーから、Sketch3, AfterEffects, Prottのようなツールを使いこなしてプロトタイプまで作成できる代替不可能な人材にシフトしていくことが今後のデザイナーの生存戦略ではないか。

発表資料

基準について知る - 貫井 伸隆 Chief UI Designer(Goodpatch)

ル・コルビュジエという建築家が考案した人体の寸法に基づいた数例であるモデュロール(Modulor)というものがある。例えば国立西洋美術館がモデュロールに基づいて設計されていて、身長183cmの人が腕を伸ばすと天井に手が届く。建築物だけではなく、全てのプロダクトが人体のサイズにあわせて作られている。アップルが提示している最小の「押せるサイズ」の44pxというのはあらゆるアップルプロダクトのサイズの基準になっている。@x1, @x2, @x3と解像度が増えて、デザイナーの仕事が大変になってきているが、個別に対応するというよりは全てのデバイスに適用できる「Universal Interface Design」が大事となってくるだろう。

AfterEffectsを使ったインタラクションデザイン - 増田 直生 UI Designer(DeNA)

実装して欲しいアニメーションを「かっこよく」「気持ちよく」などのニュアンスで伝えてもなかなか上手くモノがあがってこない。AfterEffectsを使ってデザイナーがインタラクションまで作ることで、動くプロトタイプを見ながら具体的なディスカッションを行うことができる。デザイナーがモーションのプロトを作ることで、デザイナーの仕事は増えるが、プロジェクト全体の効率はあがる。使い方はFlashと良く似ている。

誰のためのUI? - 藤井 幹大 UX Designer(Goodpatch)

モノづくりのゴールを実現するフレームワークとして「ユーザーの体験」「ユーザーの行動」「存続可能性」「モノ」のサイクルがあると考えている。この四つの要素に紐付けて、色んな指標も決められるし、UIもこのフレームワークベースで考えることができる。例えば、ユーザーの体験を高められるUIとは?存続可能性を高められるUIとは?といった追求ができるようになる。何を重要視するかは個人の価値観が現れるところでもあり、モノづくりにおいて職種ではなく責任でこの四つをカバーすべきである。いかにこのサイクルが機能するチームになっているかが重要。

発表資料

iPhone6/iOS8 デザイナーが知っておくと便利なTips - 沖津 貴智 Engineer(DeNA)

- iPhone6に対応してるかどうかはステータスバーのサイズを見るとわかる。対応済みの場合は高さがその他のiPhoneのサイズと同じ。
- iPhone6 plusは1920×1080の401ppiとなっているが、実際は2208×1242のサイズを0.87倍にしているので、モック作業の際は2208×1242でやっておくと良い。
- 解像度が増えたがpdfファイルを使ってVectorイメージを使うことができる。生産性が上がるのでできるだけpdf対応を検討すべき。
- LaunchScreenも解像度別に分けず、Xcode6から一つのファイルにすることができる。
- iPhoneの動画が今後App Previewsという名前で録画できるようになる(OS X Yosemite + QuickTime)。
Xcode6, iPhone6, iOS8対応、大変だがやり方は工夫できる。頑張りましょう。

発表資料

Prottのデザインプロセス - 小林 幸弘 UI Designer(Goodpatch)

Flintoを使うことでGoodpatchのデザインプロセスが圧倒的に変わった。Flintoのようにスケッチから素早くプロトタイプを作成できて、チーム内に共有してコメントをもらって開発の早いフェーズからフィードバックをもらったり、背景画像を設定してアプリの世界観を伝えたりすることができるプロトタイピングツール、Prottを作ってみた。今後はワイヤーフレーム、遷移図、複数ジェスチャー、自由配置などにも対応し、プロトタイピングに役立つツールとしていきたい。まだスタートラインに立っただけという認識。

私は業務としてワイヤーフレームを作成することが多く、それに最も適しているUXPinを愛用しています。これからは個々の画面を設計することも大事ですが、画面から画面への遷移、また画面内のUIコンポーネントの操作を行うときのモーションを考えることが重要になってくると思います。Prottはトランジション機能も提供しているとのことなので、使ってみて使い勝手が良ければ乗り換えることもあるかもしれません。

今後のUICrunchはDeNAやGoodpatchに限らず、色んな会社の人にも参加してもらいLightning Talkなどやっていくらしいです。今回のようなかしこまった感じではなく、もっとゆるくやりたいとのこと。UIデザインに関わる全ての人にとって有意義で楽しい場と成長することを期待しています。

2014年10月12日日曜日

UX Book Club - Observing the User Experience

「Observing the User Experience」読書会 facebookイベントページ

今回で3回目を迎えたUXAnalytics Lab主催の読書会に参加してきました。この読書会には、様々なバックグラウンドを持ち、違う環境で働いている方々が、UXのことを理解して勉強したいという共通した動機で集まっています。読書会は主催の若狹さんが洋書を選び、パート分けしてそれぞれの担当を決めて、内容の要約や感じたこと、関係する事例の紹介などを持ち寄って発表するという形です。日本語の本を読むより、英語の本を読むことでより前後文脈を考えたり悩んだりすることで理解が深まるという効果があります。

今回はみなさんの発表資料のクオリティがとても高く、発表も聞いて分かりやすくて非常に勉強になりました。元々の本の分量が膨大だったため、発表だけでかなり時間がかかってしまい、みんなが現場で体験したことや独自の意見などをぶつかり合う時間が足りなかったことは少し残念でしたが、UX Practitionerとして押さえておくべきものが網羅されていると言っても過言ではない本書の内容を一通り全て学ぶことができたことで、強い達成感を得ることができました。

発表内容を章の順番に沿って整理してみました。

PART I
Why Research Is Good and How It Fits into Product Development

Chapter 1 Introduction (若狹さん)
LEGOから得られるレッスンが六つある。コアオーディエンスを良く知ること、メインユーザー層を超えたユーザーニーズを知ること、リサーチで得たものを建設的に変換すること、ユーザーリサーチから全体的な結果に繋げることなど。コアオーディエンスである子供たちに向けた商品に注力したのはもちろん、一緒に遊ぶ大人にもアピールする商品を創り出し、成長によって難易度を変えて達成感を強くしていく仕組みも導入するなど、ユーザーリサーチによって具体的な効果を出すことができた。

Chapter 2 Do a Usability Test Now! (若狹さん)
Nano-usability Test(一人にプロダクト・サービスを使わせて観察、分析)など、今すぐはじめられるユーザビリティテストに取り組むべき。本田宗一郎の「やってみもせんで、なにがわかる」と通じるところがあると感じた。

Chapter 3 Balancing Needs through Iterative Development (若狹さん)
Iterativeな開発とWaterfallな開発で、それぞれ開発のフェーズによって向いている手法と向いてない手法がある。例えば、何を作るかを検討する段階ではインタビューやサーベイが有効、一通り動くものを作ってからはユーザビリティテストやサイト解析が有効。開発のフェーズや環境によってFlexibleに適用する手法を選ぶべき。

PART II
User Experience Research Techniques

Chapter 4 Research Planning (平野さん)
どんな小さなプロジェクトであっても、計画が必要。ゴールを決めてから、それにあわせてスケジュールやバジェットを決める。ゴールを決めるときは、社内社外を含む様々な立場の人にとってのゴールをまず確認し、そのゴールにImportance(重要度)やSeverity(深刻度)を基準にして点数をつけて優先順位を明確にしていく。

Chapter 5 Competitive Research (平野さん)
競合調査はタイミングを見計らってやるよりは、常に続けることが望ましい。特にリデザインする前に、課題解決のために競合を調査分析するのはとても効果的である。Tier1競合(ガチンコでかぶっている場合)とTier2競合(同じカテゴリーだけど、Tier1ほどかぶってない場合)、ニッチ競合(一部だけがかぶっている場合)という分け方をすると比較しやすい。

Chapter 6 Universal Tools: Recruiting and Interviewing (岩﨑さん)
リクルーティング(被験者募集)やインタビューはどちらも重要。どちらかを間違えるとその後のプロセスが全て狂ってしまう。特にスクリーニングが上手く機能してなくて、不適切なユーザーが被験者として選ばれてしまうことは大変深刻な事態。リクルーティング仕組みを大々的に見直さないといけない。ユーザー像をテンプレート化しておくと色々と利点がある。インタビューをするときは最初広い質問をして、徐々に具体的な質問に変えたあと、最後振り返りまとめあげると良い。モデレートするときは中立的なポジションを守ることが重要。

Chapter 7 Focus Groups (岩﨑さん)
元々マーケティング技法。座談会と訳しても良いかも。数人希望のグループディスカッションを数回実施して、プロダクト・サービスに対する感想や使われ方などを収集する方法。ターゲットを選定し、スクリプトを作成する。準備から音声データ起こしまで、やることがたくさんあるので、できるだけ人に任せられることは任せてしまう。例えば、モデレーションに営業職の人を活用したり、データ起こしを社外に頼むと良い。スクリーニングのプロセスをしっかり作っておいて、事前に関係者の同意を得ることが重要。

岩﨑さん発表資料 (Chapter 6, 7)

Chapter 8 More Than Words: Object-Based Techniques (ソヨン)
人々の言葉で表せない感情、希望などを引き出すための方法として写真を用いる方法(Photo Elicitation)とコラージュ、マッピングがある。これらの手法はゴールがまだ調整可能である開発初期に、ユーザーのニーズを明らかにするために実施すると効果的。出す情報が決まっていて、出し方に迷っているときはカードソーティングが有効。人々が情報をどう組織して分類するかのロジックを把握することができる。

Chapter 9 Field Visits: Learning from Observation (ソヨン)
フィールドリサーチは、ユーザーがプロダクト・サービスを最も自然な形で使っている場所に行って観察すること。プロダクト・サービスが人々の生活にどのように溶け込んでいるかを知ることができる。

私の発表資料 (Chapter 8, 9)


Chapter 10 Diary Studies (大谷さん)
ユーザーに体験の内容を記録してもらうことによって、日常生活の中でプロダクトがどのように使われているのかを知ることができる。紙に書いてもらう方法とオンラインで投稿してもらう方法があり、両方メリットやデメリットがある。最近はRET手法と呼ばれるTwitter投稿とメール作成をあわせた報告の仕組みも使われている。この方法はユーザーのバイアス(Potential bias/Self-reporting bias)がかかりやすく、それをどう取り除くかが重要になる。また、収集したデータを解析する際に膨大な工数がかかるので注意すること。

Chapter 11 Usability Tests (大谷さん)
タスクやシナリオを設計する時に、ユーザーが普段からやりそうな状況を設定することが大事。モデレーションのテクニックが必要で、ふんわりした回答を掘り下げて生々しい話・個人的な体験にまで持っていくことが重要。

Chapter 12 Surveys (梅澤さん)
サーベイに良いタイミングは、良い質問が思いついたとき。質問は具体的に設定すること。様々なバイアスに注意すること。例えば、クリスマスシーズンにショッピングについての設問をしても、普段とは違う回答が返ってきたり(時間バイアス)、会社員が働いてる時間に質問を投げても答えが返ってこなかったり(持続バイアス)、などなど。結果を分析して、定性調査で補完する。

Chapter 13 Global and Cross-Cultural Research (梅澤さん)
国境を超えてグローバルなリサーチをしたり、違う文化背景を持つ集団に対してのリサーチを行うこともある。謝礼をその国や文化圏にあわせたものにするなど、細かいところに色々気を配らないといけない。本格的な調査をはじめる前に、IDEOのツールキットを使ってエクササイズすると良い。

梅澤さん資料 (Chapter 12, 13)

Chapter 14 Others’ Hard Work: Published Information and Consultants (河合さん)
全てのリサーチをゼロから行う必要はないので、公開されている資料を使ったり、コンサルタントを雇うことも良い方法。netratingsやcomscoreなどが良いサービスを提供している。情報メディア白書を参考することも良し。

Chapter 15 Analyzing Qualitative Data (河合さん)
たくさん集まった定性的データを整理して、パターンを見つけること。方法はたくさんあるけど、目的がしっかりしてないとどの方法を用いれば良いかわからない。目的がはっきりしてないと、UXマップをとりあえず作ったけど活用されないといったようなことが起きる。3Mのポストイットをデジタル化してくれるアプリを使うとデータの整理が楽。

Chapter 16 Automatically Gathered Information: Usage Data and Customer Feedback (中垣さん)
Usage DataやCustomer Feedbackといった自動で集まるデータをどう活用するかはまさにUXリサーチャーの仕事である。例えばA/Bテストを行って、その結果をもって良いデザインを採用することで、CVが上がって、UXが向上されるといったことが起きる。ただ、細かいデータばかりを見るのではなくて、全体への影響なども考えてこれらのデータを活用すべき。Customer Feedbackもあくまでも顧客一人ひとりの意見なので、参考までに活用した方が良い。

PART III
Communicating Results

CHAPTER 17 Research into Action: Representing Insights as Deliverables (中垣さん)
ユーザーリサーチの成果は会社あるいはクライアントにしっかり伝えてこそ意味がある。アウトプットとしてペルソナ、シナリオ、タスク分析ダイアグラム、エクスペリエンス・モデルといったものを提供するとステークホルダーも理解しやすいはず。残念なUXデザイナーの成果はパッと見なんだかいい感じかもしれないが、ステークホルダーを説得できる力を持っていなかったりする。

Chapter 18 Report, Presentation, and Workshops (吉田さん)
成果を報告したり、プレゼンテーションしたり、ワークショップを行うことで会社やクライアントにフィードバックすることもUXデザイナーの大切な仕事である。例えば報告書を作成したり、プレゼンテーションをするときには、要約を持ってきて、それをサポートする内容を添え、最後に証拠やデータを加えると効果的。

Chapter 19 Creating a User-Centered Corporate Culture (若狹さん)
ユーザーリサーチの成果をフィードバックすることで、企業をユーザー中心でものごとを考えるような文化に変えていく。スモールチームではじめてスケールアップしていき、ステークホルダーを巻き込み、リサーチの結果を明白にして、自分(UXデザイナー)がもたらした効果を測定可能な値で提示する。また、ユーザビリティの価格を策定して、自分の貢献度をわかりやすくアピールすることで、ユーザーリサーチの重要性を理解してくれる環境を作り上げること。

Observing the User Experience: A Practitioner's Guide to User Research (Interactive Technologies)