2014年12月10日水曜日

ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 winter

ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 winterに参加してきました。今回のイベントは『ユーザーエクスペリエンスの測定ーUXメトリクスの理論と実践』の発売記念も兼ねていて、著者のビル・アルバートさんが本の内容だとか、ベントリー大学でUXセンターの実行ディレクターとして様々な会社の依頼を受けてきた経験談などを二日間集中的に話してくれました。

ベントリー大学では16週にかけてUXメトリクスについて講義をしているとのことでしたが、今回は二日しかなく、詳しい話が聞けなかったことは残念なので、詳細は書籍を読んでみて突き詰めて勉強をしようと思いました。UXメトリクスとはなにか?なぜUX向上において重要なのか?組織に導入するためにはどうすれば良いか?といった話がメインで、ケーススタディの中では今すぐはじめようと思えるような実績的な内容もたくさん含まれていました。

二日間、六つのセッションの内容をまとめてみました。


UXメトリクス入門 – ユーザーエクスペリエンスの測定とは?

UXメトリクス(測定の基準)を持つことによって、問題に着目したり、回避したり、問題の大きさをはかったり、競合との差別化をはかったり、改善の記録をつけたり、マネジメントを説得することができる。例えば、タスクの成功率、タスク完了時間、離脱、満足度の度合い、使いやすさの度合いのような測定に関わるもの(従属変数)と、ユーザーの年齢、性別、プロダクトのデザイン、使用頻度のような操作に関わるもの(独立変数)があって、それらを組み合わせて使うことによって、知りたいことに対する答えを得ることができる。自分にあったUXメトリクスを設計するためには、何を知りたいのか、得た情報をどうするつもりなのかを明確しておくことが重要で、UXメトリクスは決まった形がある訳ではなく、自分で組み立てるレゴのようなものである。

UXメトリクスの現状 – 欧米のUXメトリクスの最新動向

UXメトリクスに取り組んだ理由は、90年代のUXのメソッドはもっとゆるかったし、声が大きい人の意見が通りがちだったので、スタンダードな手法を確立することによって、UXをより尊敬される分野にしたかったから。また、実際多くのケースを見て聞いて、色んなところの独自のメトリクスの工夫を見てインスパイアされた。2008年に出版したこの本は今まで売れ行きが落ちたことがなく、ステディーに売れ続けている。みんなが測定可能な基準を必要としている証拠だと思う。

トレンドとしては、まずUXメトリクスに対する専門性を持つ人がまずいないのに、企業としてはUXで差別化をはかろうとするため、人が足りない状況。ベントリー大学の生徒たちもいくつもの内定をもらっている。また、Emotional engagement(感情的なつながり)を調べようとする企業も増えている。どれだけ愛着を持ってくれて、家族や友達に紹介しようとするかどうかなど。中国に行ったときに、UXに対する情熱にびっくりした。今までなかった文化なので、早く学ぼうとしてみんな熱心。

UXメトリクス・ケーススタディ – UXメトリクスをどのように活用するか?

9つのケーススタディの紹介。ユーザビリティベンチマーク、ベースライン評価、情報アーキテクチャ、ブランド認知、ローカライゼーション、マイクロインタラクション、エラーと学習可能性、比較評価、アイトラッキングと広告の事例。どれも知りたいことを明確にして、それを知るための指標を設定し、測定結果をもって次のアクションにつなげることができた例。ベンチマークの例では、3つの競合製品を含めた4つの製品をメジャーの上に「使いやすい順で並べてください」というタスクを出して、その距離を指標として使用した。こうすることでユーザーの心理的な満足度を測定可能な定量データにすることができた。

UXメトリクスの実践 – ユーザーエクスペリエンス測定のための秘訣

クエスチョンの定義→計画→データ収集→分析→結果の提示のプロセスをまわす。リサーチクエスチョンは、何を知りたいのか?どうしてこれを知る必要があるのか?といった、リサーチの目的をはっきりとしたもの。それが決まったら、質問に答えられる手法を選ぶ。例えば、ユーザーがウェブサイトでなぜ悪戦苦闘するのかを知るためには、定性調査が有効である。しかし、どのような色がいいか?といったものは定量調査が向いている。それから、モデレーションありなしを選ぶ。モデレーションありの方がたくさんの洞察が得られるが、なしの方がサンプルサイズが大きく、データ収集が早い。計画が終わったらデータを収集し、分析を行う。分析時はアウトライナーを特定して除く、最小値を除く、平均値ではなく中央値をレポートするなどの工夫をする。最後はデータを統合し、「UXスコア」を算出すると比較の際に役立つ。

UX戦略としてのUXメトリクス – UX活動を推進するためのドライバー

日本でもUXが脚光を浴びている。UXが求められる背景として、「製品からサービスへのシフト」「社会インフラのスマート化」「競争化・グローバル化における経営戦略の要請」といったものがある。効果的なUX戦略を分解すると、リーダーシップ、メソッド、メトリクス、マネジメントになる。組織の中でUXを普及させるためのマネジメント、工程にあったUXメソッドの実施、組織の大きさや目的にあったリーダーシップとともに、メトリクスが重要になる。「測れないものは管理できない」というドラッカーの言葉のように、測ることは組織化活動の要である。UXメトリクスをUX戦略推進のドライバーとして、ユーザー視点のKPI、マーケティング視点KPI、業務プロセス視点KPIなどを設定して、達成のためにPDCAを回すべきである。

UXメトリクスの応用 – UXメトリクスの組織への適用方法

UXの分野は急成長中で、人が足りない。現在UXの仕事をしている人たちの背景はデザイナーから歴史を専攻した人まで、多様であり教育レベルも高い。組織としては、UXのことを意識していないところもあれば、根付いているところもあって、それを「UX成熟度モデル」で表すこともできる。UXを推進するためには、組織的なサポートが必要で、定性・定量的手法の経験のあるUXチームを作ることが重要。UXメトリクスを実施するためには、小さくスタートして拡大していくやり方をオススメする。まずはゴールやKPI、配役と責任、予算といったプロジェクトの定義を行い、計画にあう手法を選んで実施する。発見をしたいのか、デザインの評価(形成的評価)をしたいのか、検証(総合的評価)をしたいのかによって、手法は違ってくる。手法を選んでデータを収集したら、それを分析して、マネジメントに説明するところまでが一つのサイクル。


「UXメトリクス」というと、なにかと専門知識が必要だったりお金がかかったり時間がかかりそうというイメージが強かったけど、UXを測定するという考え方は特に大げさなことではなく、「仮説を立てる→検証する→改善する」というユーザー中心のデザインプロセスにおいて必ず必要になるものであることを再確認しました。ログなどお金や時間をかけなくても自然と集まる大量のデータをいかに分析して次に活かすかを明確にするためには、UXメトリクスを設定して活用することが不可欠と感じました。

私の日頃の業務で、例えばデザインの細かなところでチームの意見がわかれた場合、「恐らくこうだろう」という意見ベースでしか話が進まなくなるので、そのときに「誰に見られて」「どのように使ってもらいたいのか」を明確にして、そのような人たちを対象に小規模でもいいのでアンケートを実施して、判断の根拠となる定量データを確保するというアプローチは今すぐにでも使えるものだと思いました。

また、聞いているときはとても概要的な内容だと感じていたのですが、こうやってブログにしてまとめていると、概要だけでもかなり盛りだくさんだなぁと思えてきたのとともに、これらの内容は本当に概要にすぎないので、実践するためにはより深く勉強をしないといけないなと思いました。UXをただ勘で進めるのではなく、きちっとしたロジックで根拠を残しながら進めるための、とても有益な話を聞かせていただくことができて、スピーカーのビルさんと篠原さん、主催のソシオメディアさま、またこのイベントを紹介してくださった方に感謝します。

2014年12月9日火曜日

EuroIA 2014 で思ったこと色々


これは、【UX Tokyo Advent Calendar】のために書いたものです。(12/9)

ヨーロッパ最大のIA/UXカンファレンス、EuroIA 2014に参加してきました。今年は開催10周年ということで、1回目の開催地だったベルギーのブリュッセルで、9月25日から27日までの三日間にかけて行われました。形式としては午前中はワークショップ、午後はプレゼン、合間にみんなで食べたり飲んだりして交流するという形でした。私が参加した三つのワークショップの中、二つのワークショップの内容についてはその詳細を会社のブログに寄稿していますので、今日は「飲んだり食べたり」の時間に見たこと思ったこと感じたことを共有してみようと思います。



1. ベルギーは地理的にフランスやドイツ、オランダに接していて、話す言葉もバラバラです。私は会場から徒歩3分のところに泊まっていて、主な観光地も徒歩10分以内に密集していてあまり遠くへ行くことがなかったのですが、それでもあの小さい地域の中でフランス語やドイツ語、オランダ語や英語が飛び交っていて非常に興味深かったです。中には4カ国語を流暢に話す人も多く、相手がフランス語は話せないけどドイツ語はいけるということがわかった瞬間にドイツ語モードに変えて話すなどしていてすごいと思いました。

EuroIAの会場には求人の紙が貼られていましたが、スキルの一つとして「ドイツ語とフランス語、オランダ語がビジネスレベル以上」という条件があったり。ベルギーの人たちとスタートアップ文化について話していると、彼らにとってローカライズはとてもやっかいだけどクリアしないといけない大きい課題らしいです。日本は日本語がわかる人がほとんどなので、日本語に対応しておけば1億以上の人に理解してもらえることが保証されますが、ヨーロッパの場合、例えばフランス語で対応しても母数が全然少ないのでビジネスとして成り立たず、サービスの成長のためには必ず他言語対応をしないといけないそうです。このようなヨーロッパ独特の事情が聞けて良かったです。



2. 東京のことを「なんだか未来都市なイメージ」と言っていた人が多くて面白かったです。彼らの頭の中にはモノレールが走っているとか、スカイツリーが光っているとか、タッチして自動販売機から飲み物を買うといったものが東京のイメージをなしているのかもしれません。ヨーロッパは大都市でも古い建物がずっと昔から残っていて、そのような環境で暮らしていると、「東京」はSF映画に出てきそうな未来都市のように思えるのかもしれません。何かに対するイメージというものは相対的なものなんだなーということをあらかじめ考える良いきっかけになりました。


この絵はなにごとも相対的なんだなぁと感じたもう一つの例です。これは現地で仲良くなった人が描いてくれた、EuroIAで出会った人たちの似顔絵です。左上に登場しているのが私で、空き時間にひたすらテレビを見ていることや、猫を飼っていることは自分で言ったので、「TV GIRL」というあだなをつけられたり、まわりを猫を描かれたりしたのは単に面白いと思っただけですが、白人から見たアジア人の顔って、やっぱりああなっちゃうんだな、というのが軽い衝撃だったです。アジア人同士で似顔絵を書くと、絶対あんな顔にはならないはずで、私自身も自分の目があんなに細くて、鼻があんなに低いとは思ったことがないのです(笑)


3. 10年間ずっと参加しているという人も多かったので、「昔この会はどうだった?」という質問をたくさんしてみました。共通したものとして、「昔はもっとどうすればいいかわからず悩んでいた」「世間に理解してもらえなくて集団でいじけていた」といったものが多かったです。また、ウェブの時代はよりヒューリスティック調査のようなチェックリストベースの判断基準を作ろうとしていた人が多かったけど、モバイルの発展によってコンテキストを重要視する考え方がメインになってきたという話もあってなるほどと思いました。

「世間に理解してもらえなかった」の部分において、やっぱりAppleの貢献は著しいもので、iPhoneやiPadの普及によって一般の人も「ユーザビリティ」がどんなものか理解しはじめたり、UXの導入が多くの会社で本格的にはじまるきっかけがAppleのビジネス的な大成功であることはほぼ全員同意していました。

「どうすればいいかわからず悩んでいた」の声を代弁したものとして、EuroIAの最後のスピーチ、情報アーキテクトのAbby Covertさんによる「Six things we still suck and four lessons to teach the kids(我々がまだヘタクソである六つのこと、また子供たちへの四つの教訓)」がそのような観点を分かりやすくまとめてくれていました。スピーチでは、いかに長い歴史の中で人々が情報を扱ったり分類したりすることに戸惑ってきたのか、またいかに今でもみんなが「情報」に困惑していて悩んだり苦労したりしているのかを500年の情報の歴史、またここ十数年の世の中の変化の話を交えて話してくれました。


4. 私が東京で仲良くしている人たちはほぼ映画好きだったり音楽好きだったりしてカルチャーについての話題が枯れることがないのですが、現地で出会った人々とも「タランティーノ映画の中で一番好きな作品は?」と言った、非常に東京で普段話している話題そのままだったのが印象的でした。

最近UXデザイナーの才能というか素質的なものってなんだろう?というのをよく一人で考えていて、UXデザイナーたちはアーティストではなく、科学者でもなく、典型的なビジネスマンではないけど、これらの素養をいい具合に備えていないといけなくて、「いい具合」ってなんだというのを見つけるためにはまた絶妙なバランス感覚が必要かなと思っています。そのバランス感覚も含めて、後天的に学習したものではなく、何か生まれ持ったもので良いUXデザイナーに必要なものはきっとあるというのが私の意見です。

例えば「共感能力」です。共感する力はユーザーの立場でものごとを考える際に非常に役立つもので、自分ではなく、他の人たちがどう思って、どう行動するかをシミュレーションする能力はまさにこの「共感」から生まれてくるのだと思います。共感能力が強い人たちはすぐ登場人物だとかストーリーに共感しちゃうので、人並み以上にフィクションに入り込んで楽しむ傾向があるのではないかというのが私の仮説です。日本だけではなく、ヨーロッパでもUXをやっている人たちが情熱的に映画や小説の話をしているのを見て、自分の仮説がまたひとつ確かなものであると思いニヤリとしました。


5. 三日間にわたる熱く楽しいカンファレンスは最後のマイクセッションにて、「People & Process for UX Process」というワークショップを担当していたPeter Boersmaさんの突然のプロポーズとBirgit Geibergerさんとの婚約でめでたく幕を閉じました。私は最前列で「Oh my god 産地直送の生プロポーズや!!」と興奮しながら、EuroIAは人に出会って親しくなり結婚できちゃうほど親密なコミュニティなんだなぁと思っていました。UX Tokyoもこのようにあたたかく、やさしく、人間味溢れるコミュニティとしていてくれて、東京の大きいUXのイベントでも、プロポーズする勇者が現れることを楽しみに待っています。


2014年11月27日木曜日

UI Crunch #2




UI Crunch #1に続き、UI Crunch #2をスクーで受講しました。今回のテーマは「デザイナー不要論について語る」。ウェブサービス開発の現場におけるデザイナー不要論と5〜10年後の生存戦略が業界で話題になり、それ以来デザイナー不要論について色んなところで議論が行われたりして、関心が高まっていることを私も体験してきました。今回のUI Crunchは既存の「デザイナー」でいつづけるのではなく、何かを武器にすることでいかに自分を価値を高めることができるかという話がメインでした。(実際、不要論をテーマにするために、もともと準備してきたテーマを延期にしたとのことです)

それぞれのプレゼンについて、内容を簡単にまとめてみました。

UIデザイナー最終防衛マニュアル - Taiki Kawakami(Λ Structure Design/Designer)

UIデザイナーが現状を変えたいときにできることは、短期的には四つ。革命、転職、独立、趣味。長期的には啓蒙を行ったり、UIのコードに当たる部分(Wireframeだとか、Prototypeのようなロジックがわかるもの)を公開すると良い。自分でGunocyをリデザインしてみたが、その記事がバズった。その理由はやっぱりデザインにきちっと意図を加えていたからだと思う。デザインの裏にある「意図」を明らかにすることで理解されるようになる。

風呂場で考えるUIデザイナーの未来 - 上谷 真之(nanapi CCO/Designer)

風呂場で、つまり服を脱いで(=既存の考え方、フレームワークから抜けて)自分のことを考えてみた。こわす、ならべる、もどす、のプロセスで新しい自分に気づくことができた。肩書きも会社の名前も取っ払って、自分起点に物事を考えてみた。自分を会社や社会にあわせるのではなくて、環境を自分にアジャストすると考えると「おにぎりデザイナー」というタイトルが出てきた。肩書きはどうでもいいもの。自分でやりたいことをやりましょう。

UIデザインの価値 - 吉田 健吾(トレタ COO)

デザイナー不要論について、ブログを書いた。UIデザインはユーザーとの接地面であり、UIデザインが使えなかったりしてユーザー体験を害してしまうと意味がない。飲食店の例をあげると、従業員はみんな忙しくてなかなか電話に出られなかったりするので、電話しながら片手ですぐ操作しやすいiPadのアプリを作った。UIの使いにくさは全てコストに直結する。しかしりん議では多機能や低価格のようなものに比べて、デザインは大切に扱われてない。「UIなんて一年あればなれる」なんて言われたりする。現場で実際どのように使われるのかを根拠にしてデザインの価値を訴えたり、競争力として価値を証明していくことが重要。

経験に基づく「UIデザイナー」の必要性 - 藤川真一(えふしん)(BASE CTO/取締役)

エンジニア出身でウェブ業界は長い。かなり前から、営業で重要な仕様が決まり、制作部門が不満をかかえ、納得いかないので自分たちのコストで作っちゃって、開発部門がとばっちりを受けるといった悪循環が起きていた。そのような環境の中での、自分の昔の愚痴を紹介したい。デザイナーに求められる能力はグラフィック力だけではなく、「設計」できることも重要で、ウェブに興味を持っていること(=ゲームをやっている)も重要だと考えた。今もその基準は当てはまっていると思う。BASEで求める人材もそのような人。


デザイナー不要論でざわついているデザイナーがたくさん参加したところで、「実は不要な訳ない、自分の価値を高める努力をすれば必要なはずだ!」というよく考えると当然でもある話が多かった印象はありますが、当然のことだからこそどうすれば良いのかわからないというオーディエンスの悩みも伝わってきて、実際「給料をあげるためにはどうすればいいですか?」「採用の基準を教えてください」といった生々しい質問が飛び交っていたのも大変面白かったです。そのように質問に対して、決して現状をはぐらかしたりせず、パネルのみなさんの実際の経験に基づくためになる話がたくさん聞けてよかったと思います。

例えば、給料をどうすればあげられるかという質問に対しては、BehanceやDribbleに半年間投稿し続けると必ずオファーがくる、なんなら僕が会いに行きますという熱い回答が返ってきたり。日本では会社に対する守秘義務があるので自分で制作したものを社外に公開してはいけないという雰囲気があるけど、それは健全じゃないので業界的に変えていきたいという話もあって、大変共感しました。

UIデザインに関わる様々な業種の人(といっても、主にデザイナー)が集まって、現状を冷静に見つめた上で、これからのことを考える場が今まであまりなかったと思うので、このようなイベントが開催されていること自体もすごく有意義なことだと思いますし、さらに他社事情のようにすぐ使える実践的な話が聞けたこともよかったです。この取り組みがどのように変化して成長していくか、これからも楽しみにしています。

関連記事
第2回 UI Crunchレポート「UIデザイナー不要説について語る」

2014年11月5日水曜日

RE:DESIGN/Creative Directors Day3

今日でコンファレンスは終わりです。今日は午前中に三つのセッションがありました。

Ti Chang - We’ve Come A Long Way

初日のディナーで、Tiさんとは同じテーブルに座ることになり、彼女の犬の写真を見せてもらったり、その後も他のセッションで一緒になったりして、とても魅力的な人柄の人だと思ったので、どんなセッションになるのか気になって参加してみました。

"Hello, I am a sex toy designer"ではじまるプレゼンテーション。100年前には女性の性欲は病気とみなされ、お医者さんが女性の性器をマッサージして"治療"する過程でセックス・トイの原型となるものが使われた。その後ポルノ映画が発達し、セックス・トイは治療の道具ではなく快楽と関係するものであることを大衆に理解されはじめたが、公に話すことはタブーとされてきた。Tiさんがセックス・トイをデザインした理由は、ものづくりの全てのプロセスに参加したかったのと(そのために会社を立ち上げたとのこと)、また女性のために役に立つことをやりかったからだそうだ。あきらかに男性の視点でデザインされた色違いの大きいディルドではなく、本当に女性たちが使って喜んで恥ずかしがる必要のないものを作ろうとした。それでできたのがCraveの製品群である。

確かにこのデザインなら恥ずかしがる必要もない

彼女はもうセックス・トイを使うことを恥ずかしがる必要のない、Modernな時代が到来したと言っていましたが、セックスについて話すことはもちろん若者がセックス自体やらなくなった日本社会から来た私にとっては、そのような時代が来たんじゃなくて、彼女のような鋭い問題意識を持った人々がそのような時代を作り上げているのだと思いました。

Stanley Hainsworth - Ten Years Of Instant Change

10年間のトレンドの変化でも見返すものだろうかと思って参加したのですが、想像したものとまったく違う形のセッションでした。ラウンジに入ると椅子が丸いレイアウトで配置されていて、お互いの肩をぶつかるくらいの狭さ。Stanleyさん曰く、AA(アルコール中毒のための匿名の集まり)のようなスタイルでやるとのことで、実際その通りでした。

Stanleyさんの個人的な体験の話からはじまる。LAで俳優になろうと思って暮らしていた。しかし突然親戚の一人が事故を起こし、その奥さんは死亡、本人は収監され、その夫婦の二人の子供をいきなり引き取ることになる。それをきっかけに、人生のパスが一転。キャリアパスも俳優からデザイナーに変わった。このような変化を括りぬけてくる際に、自分の幸いな無知(A blessed ignorance)が役に立ったと思っている。みんなも自分の人生を変化させた、できごとや気づきのことを共有してほしい。

実に様々な体験や気づきがその場で共有されました。これは私にとってはとても驚きで、コンファレンスというのは知識や洞察を共有する場だと思っていたのですが、このようにとても個人的な体験や感情まで共有することが可能であることに深く感動しました。最後に気づきを共有した人は、ベルギーに行ったときに2000種類のビールを見て興奮し、「誰かがこのビールをデザインしている」ことに気がついたと言います。そして、自分が好きなことをやるためにスタジオを作り、今は大好きな食品を扱う仕事をしていると言いました。デザイナーは世の中のみんなに対して、責任を持つとも言いました。なぜなら、彼がベルギーで体験したように、誰かがデザインしたものを他の誰かが触れるからです。この話は特に目から鱗でしたが、他にもたくさんの話を聞くことができて、自分の人生で起きた変化についても考えることができました。

Jonah Lehrer - On Failure

ここで出会ったみんなに私はCreative Directorのことはよくわからないけど、ラインナップの中で有名な人はいるの?と聞いてまわると多くの人がJonah Lehrerさんのファンだと言いました。The New Yorkerなどの著名なメディアに長く寄稿し、幅広いファンがいるようです。

今回のコンファレンスの進行やプログラムのアレンジなどを担当したChristopher Simmons(左)とJonah Lehrer(右)

マイリトルポニーというアニメを見ると、ポニーたちはお尻にタトゥーをいれている。それはポニーたちのアイデンティティーそのものである。そのタトゥーを見つける方法は一つしかない。私たちがそれを愛するかどうかだ。それはまるで下着のようなもので、意識してなくても常に自分に密着しているものであり、またそれはロメオとジュリエットと一瞬で燃え上がる恋とは違って、人生をかけてやり続けることでなければならない。Jonahさんの場合それは書くことだ。2年半ほど前に、剽窃のことで騒動になり、一度は書くことを辞めようと思ったこともある。しかし気がつけばまた書いていた。それが何かを愛するということ。また、そのときの失敗で気づいたことも多かった。楽で簡単というのはいつもベストなやり方ではない。何かを創造するということは大変なことであり、苦しいプロセスや失敗を抱擁することで良いよいクリエイターになれる。

変化に適応する能力だけではなく、変化しない何か(愛する何か)を持つことの重要性についてあまり考えたことがなかったなぁと思いました。マイリトルポニーから人生の哲学を導く洞察は素晴らしいものだと思ったので、これからは彼の寄稿などをチェックしてみようと思いました。

2014年11月4日火曜日

RE:DESIGN/Creative Directors Day2

昨日に続き今日は六つのセッションがありました。

Everett Katigbak - Seeing With Sound

ミュージシャンとして、キュレーターとして、環境デザイナーとして、様々なキャリアを経験してきた。facebook時代は、環境デザイナーとして活躍しながら、ミュージシャンとしての才能を活かして、テーマ音を作ってダイヤル音に採用されたりした。pinterestではブランドマネジャーとして面白いコンテンツを作って発信したりしている。ヒッチコックの映画『北北西に進路を取れ』のワンシーンをノーサウンドで与えて、みんなで推測して録音するアクティビティ。最初なみんな戸惑っていたが、なかなか面白いものができあがった。

Josh Higgins - Words As Flint

facebookのコミュニケーションデザインマネジャー。アーティストとして、使命感を持って自分がやるべきだと思うことをやってきた。その一つとして、オバマ大統領のポスターを制作してキャンペーンで使われたこともある。「好きなことをやって、世の中の役に立つべき」という名言を聞いたからこそこのような活動ができた。まわりのクリエイターから聞いた彼らの人生に影響を及ぼした名言の紹介(Tweets 1 2)。 それからセッションに参加したみんなにとっての名言のシェア。

Alissa Walker - Sidewalk Critic: Exploration, Observation, and Mid-Century Modern Architecture

GizmodoのUrbanism Editorとして活躍している。例えばLAで車を持たずに暮らすにはどうしたらいいのかを身をもって探求したり。今日はパームスプリングス周辺を歩いて、みんなで気づいたことをシェアし合おう。このへんの現代的な建築群については、ネットで調べるとすぐ出てくる(article)。

この形の屋根を"The butterfly roof"というそうだ

George Slavik - Adapting To The Job

与えられた役割をこなすということについて、ワークショップ形式でみんなに体験してもらう。4人か5人でチームを組み、それぞれのメンバーにはバンドの一つのポジションが与えられる。例えばヴォーカリストは、ペンを使うことができる。ドラマーは時間管理をして、ハサミを使うことができる。ベーシストは糊が使える。こうやってみんなで自分の役割を守りながら協力して、自分たちのバンドのコンサートポスターを作りあげる。

バンドの名前"The Hellveticas"には笑った…

Jay Jurisich - Bacteria, Brands and Ballyhoo

言葉というのはバクテリアとも似ている。最初は慣れない言葉を人々は受け入れようとしないが、一度抗原が作られると、マイナーだった言葉が一気にメジャーになったりする。様々な企業のブランド名をつけてきて得た名前や言葉に対する洞察について。例えばVirgin Airlines。最初に航空会社の名前として"Virgin"を言い出した人は誰だろうか。しかし今考えるとやったことのないことに挑戦する企業の意気込みがよく表れている。このように新しくつけるブランドの名前は半分破壊的で、半分受け入れられるようなものがちょうど良い。

Lawrence Azerrad - Design + Music

音楽を視覚化することについて。キャリアとしてRed Hot Chili Peppersの『Californication』のジャケットのデザインをしたり。メンバーが夢で見た、空が海になっている風景がもとになっている。今日はアルバム・リーフのジミー・ラヴェルに来てもらい、音楽を生で演奏してもらって、実際聴きながら音楽を視覚化する作業をしてみる。


さすがデザイナー集団であるだけのことはあって、
あっという間に素晴らしい作品が広がる。左は私の作品。

楽しい1日だったのですが、UX Designerの集まりに比べて、これこれを学びました、知りましたというまとめはしづらい感じです。どちらかというと、その場にいるからこそ得られることがたくさんあり、実践的というよりは体感的なセッションが多く、即席で出てくるアイデアやインスピレーションにたくさん触れたことでなんだかアーティスティックな気分です。明日は午前中に三つのセッションがあってコンファレンスは終わりです。

2014年11月3日月曜日

RE:DESIGN/Creative Directors Day1

Creative DirectorsのためのコンファレンスでPalm SpringsのACE Hotel & Swim Clubに来ています。

RE:DESIGN/Creative Directors

RE:DESIGNコンファレンスはリデザインという大きいテーマのもと、他にもUX DesignやInterior Design, Inspireといった狭いテーマを持って開催されていて、私は今年の四月にUX DesignerのためのRE:DESIGNコンファレンスに参加しています。

なぜ今回Creative Directorsの会にも参加するかというと、単純に前回のBlooklynでのRE:DESIGNコンファレンスが楽しすぎたからです。小さいグループでの開催、会話中心のセッション、多様なアクティビティがとても楽しかったので、今回も休み気分半分で人と出会ったり、美味しいものを食べたり、面白いホテルを楽しむ目的で参加しています。

特にCreative Directorsについては、企業のブランドイメージ構築などを担当するどちらかというと広告やマーケティングをバックグラウンドに持つデザイナーのことだと理解していますが、あまり多くの知見はないのに、この"Creative Director"という役職の人と働くこともあったりして、今回のチャンスで理解を深められたらなと思いました。

参加の決め手となったもう一つの理由が、場所です。パームスプリングスは昔から一度行ってみたかったし、ホテルには大きいプールもついていて、デザインも独特でイベントもたくさん行われているようで、写真を見るだけでウキウキしたので、コンファレンス参加を言い訳にして楽しい時間を過ごしてみたいと思いました。


初日は17時半からの受付で、レモネードを飲みながらみんなと歓談、その後キーノート、その後ディナーしてワインを飲むといったプログラムでした。少なくとも10人以上の人と話すことができたのですが、だいたいの感想を言うとやっぱりCreative Directorという役職を持つ人が多いけれど、グラフィックデザイナーやアートディレクターといったデザイナーも多かったのと、年代としてはUX Designの会に比べると少々高めかなと思いました。企業のブランドイメージ責任者だから、あとは広告という昔ながらの産業を引き継いでいるから、当然のことかもしれません。

今年のテーマは「Adaptation」、直訳すると「適応」ですが、何がどう変化しているか、その中でCreative Directorsができることは何かを集中的に話し合い、スピーカーや参加者の視点を分かち合うことが今回のコンファレンスの主な目的ではないかと思いました。キーノートでは、変化する女性のリーダーシップやそれに伴う課題についてSu Mathews Haleさんからお話を聞きました。

Keynote Conversation With Su Mathews Hale

適応するということとは何かを自分の人生のことと供に率直に語ってくれました。アイランド系アメリカ人夫婦に養子にされ、自分を白人だと思っていた子供時代のこと、キャリアを積み上げるときに女性として体験した様々な不条理、最近子供を生んで体験した変化のことなど。

広告を勉強していた時代は、まわりに女性がいなくて自分一人だった。現在勤めている会社にも、シニアパートナーが20人いるが、その中女性は3人しかいない。男性が定義したリーダーシップのクライテリアは変化されつつあり、女性が能力を発揮できる場がたくさんあるが、実際リーダーシップをとっている女性の数が足りないし、パワフルな女性に対する世間のイメージもひどいものである。

女性らしいことをビジネスで良からぬものを見る視点や、女性らしいというコンセプトそのものを定型化する視点はこれから変わっていくと思う。既にそのような活動に取り組んでいるデザイナーやアーティストは多くいる。

実際のキーノートの中には、Suさんが体験した女性だからこその出来事をたくさん紹介しています。私もエンジニア時代「女の子がそんなのできる?」という人に飽きるほど会ってきたので、Suさんの話にとても深く共感することができました。女性だからこうだとか男性だからこうだではなくて、多様な視点を取り入れて強い企業なっていくためには女性も男性も女性っぽい男性も男性っぽい女性もみんな必要という人間に優しい企業カルチャーが大事であることを踏まえて、多くの日本の企業も働く環境を見直してみる必要があるのではないかと思いました。

みんなが薄々感じてはいるものの、あまり深く考えたことのないトピックについてもう一度考えてもらう、とても良いチャンスだったと思います。残りセッションもこのような鋭い洞察の共有ができるといいなと思ってます。楽しみです。

2014年10月30日木曜日

Ride the Lightning vol.15

Ride the Lightning vol.15に行ってきました。このイベントは転職活動時代に知り合った方が、「絶対あなたにあってると思う」とオススメしてくれたものなんですが、どんなものなのかはまったく想像がつかず、デザインについて何かLTをやる場なんだなという風にしか思っていませんでした。


午後7時開始というもので、開始に間に合わないと貴重なプレゼンを見逃すと思い、タクシーを拾って西麻布のAQオフィスに向かったのですが、まったくの危惧でした。(場所がわかりづらかったのでタクシー拾ったことはよかったですが)このLTはプレゼンの内容も良かったのですが、ネットワーキングをするために集まる人が多く、7時開始といっても1時間ほどはビール飲みながらみんなでお話をしたり名刺交換をしたり。あとプレゼンとプレゼンの合間にも周りの人とお話したり仲良くなったりと親睦がかなり重要な目的のようです。

私は人見知り(だと自分では思っている)なのであまりたくさんの人と話してはいないですが、イギリスのデザイン会社の人で東京に訪問中でトレンドを調べている人、大手に勤務しながら副業で起業するためにエンジニアとデザイナーをリクルートしている人、既に起業しちゃって成功してる人、デザイン会社のフロントエンジニア、ニューヨークのPRATTから交換留学に来ている学生さん、AQの社員の方々など、様々な人がいて面白かったです。

ビールがあったりスナックがあったり

LT中もみんな楽しんで聞いてるだけで、ノートPCでガチャガチャ議事録を取っている人は誰もいませんでした。メモを取る人もいなかったです。やっぱり欧米と日本では聞き手が求めているものが違うんだなと思いました。日本は内容重視、欧米はスピーカーのエネルギーや表情といったインタラクションを重視するのかな、とも思いました。メモは取ってなかったのですが、覚えている内容でLTの内容をまとめてみました。

Ben Watanabe: 96 problems: iteration before conception

みんなどれだけパソコンの前に座っている?デザイナーの場合平均7時間半だそう。でもそのような生活を続けると体に無理が来ちゃう。これは問題(problem)。20分おきに起き上がれと促してくれるアプリがある。これが解決。このように小さい問題を並べて、共感する人が投票することで解決につなげるというコンセプトをホームページを作ってみた。それが96 problemsである。

例えば松屋とかで、食べながらiPhoneの画面を眺めたかった。カップの横に立ててみたけどよく倒れた。そのためのホルダーも売ってあるけど、そのためだけにホルダーを持ち歩くのもばかばかしい。そこで、キーホルダーにiPhoneを立てられるものを合体させてみた。イヤホンも収納できる。そうして小さい問題が一つ解決できた。

Takashi Fujimoto: Street Academy

ストリートアカデミーを立ち上げた話。スピーカーの経歴は華やかで、スタンフォードでMBA修了、6 figure(1千万以上)の給料をもらっていた。でもストリートアカデミーを立ち上げるべく、全て捨ててゼロからはじめた。最初は大変だった。

日本にはカルチャースクールというものがある。しかし利用者は50代以上が50%以上をしめていて、もっと場所や時間の制約を越えて自由に教えたり学んだりできないかと考えた。それで立ち上げたのがストリートアカデミー。誰でも先生になれるし、場所も自由。銭湯でマーケティング講座を開くことだってできる。

今はサイトのリニューアルに90%以上のリソースを使っているが、訳のわからないPRの効果で急にアクセスが伸びることがある。PRやマーケティング、また運を無視してはいけない。運は自分が取りにいくもの。

Mathieu Mayer: CSShapes

ChromeでCSS Shapesというものが使える。これがかなりイケているので紹介したい。例えば、サッカーボールの画像があって、その隣にテキストが来るとする。サッカーボールは丸いので、丸いマージンを置いてテキストを配置したい。そういうことができる。それがshape-outside。逆に画像の中を埋める場合はshape-inside。その形を調整できるツールもあって、開発経験がなくても簡単に領域の指定ができて便利。

例えばこういうこともできる。これはキテるし、これからのウェブデザインを変えてしまうと思う。

Naoji Taniguchi: Tokyo Mobile VR Map

バイクが好き。坂道が嫌。バーチャルリアリティに興味がある。ということで、地図を高さ情報付きで見ることができるオキュラスリフトのアプリケーションを作ってみた。その体験とデモ。


ストリートアカデミーは、私もHTML5講座を受けたりと活用させていただいています。良い講座の作り方の話かなと思ったら、そのサービスを作った人が来てトークしてるということでびっくりしました。東京の業界のナードやギークがこんなところに集まっていたかと思うともっと早くから参加すれば良かったとも思えました。これからも個人的なネットワーキングとナレッジゲットのために積極的に参加しようと思います。

2014年10月19日日曜日

iOS 8/Swift エンジニア勉強会@ヤフー

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iOS 8/Swift エンジニア勉強会@ヤフーのスタッフをやりました。社内ではほぼ毎週iOSやApple製品についての新しいトピックスだとか失敗・成功事例、個人的に研究しているテーマの発表まで、活発な発表と議論が行われていて、私もたまにこの集まりに参加したり発表をしたりしているのですが、いつも和気あいあい楽しんでいていいなぁと思っていました。今回はその場でたまったノウハウなどを社外の人々とも共有して交流をしようということで、大きい規模の勉強会が企画され、一度は台風で延期になったものの、昨日無事勉強会を行うことができました。

私はUstream配信を担当しました。

主催の概要と当日のプログラムはconnpassで確認できますし、どんな雰囲気だったのかを知りたいのであれば小川さんがまとめてくれたtogetterを見ると良いと思います。勉強会の実況はUstreamでも配信されていて、そのアーカイブも公開されています( 社員セッション / LT )。私も発表内容を簡単にまとめてみました。

ヤフー社員のセッション

iOS 8 / Swift 概要 平松 亮介 資料
この勉強会のキーパーソンの平松さんによる概要説明。ヤフーでは社員がWWDCに行ってきたり、社内で活発に情報交換をしていた。iOS6から7の時はデザインが一新されたが、今度はアプリ連携・UX向上・画面サイズ追加といった変更が主になっている。App ExtensionやInteractive Notificationなどの機能追加について。Swiftとその文法の簡単な紹介。Swiftはシンプルで堅牢に書けるので個人的にはとても気に入っている。

Xcode6の新機能 佐藤 新悟 資料
Xcode6でPlayground, 非同期テスト, Interface Builderのような機能が追加された。Debug View Hierarchyを使ってViewの階層構造を3Dで表示することができたり、自前ViewクラスをInterface Builderで描画できる。それぞれの機能に対して、実際Xcode6を使ったデモ。

既存アプリのiOS8対応 西 磨翁
iOS8の対応と言うと、1. 動くようにする、2. iOS8独自の機能に対応する、3. 6や6 plusのサイズに対応する、といった三つのことがあると考えていて、ヤフオク!は1と2に対応した。実際の事例をあげて、iOS8に対応するときに気をつけないといけないことを説明。例えばHeightとWidthの関係を間違って理解してると、レイアウトが崩れるなど。Widget機能を使った入札に対応するなど、新しいフィーチャーを積極的に取り入れた。

Extension(Widget) 田邉 裕貴 資料
Widgetは使い勝手が良く、場所的にも一等地。今日はWidgetを作ったことがない人でもわかるような内容。まずはHello worldを出してみる。プロジェクトを作成して、Today Extensionを追加することが簡単にWidgetを作ることができるが、詰まるところが多いのでその内容のシェアとTipsを紹介。Widgetでやってはいけないこととしてはキーボードの使用とスクロールビューの配置などがある。

Extension(Document Provider)大西 智也 資料
Document Providerで、自分のアプリに対して他のアプリがファイル操作をすることができる。Import/Export/Open/Moveの詳しい紹介。やり方はApplication ExtensionでDocument Providerを追加。自分のアプリから、画像をDropBoxにアップロードするサンプルアプリの紹介。

オトナのHomeKit 羽田 健太郎 資料
HomeKitはスマート家電とiPhoneを連携させるためのインターフェース。iPhone連携する家電になるためにはMFi(Made for iPhone)というライセンスを買わないといけない。Googleもnearbyで対抗しようとしている。実際に天気ステーションだとか、スマート鍵、スマート電球などのプロダクトが連携をしている。いい感じのムードを作る「Adult Key」のデモ。でも実際はラジオボタンが動くだけ。HomeKitで開発をやるために、経費で家を買いたいと言ってみましょうという提案。でも本人は言えてないみたい。

虚数は作れる!Swiftで学ぶ複素数 佐野 岳人 資料 / サンプルコード
学校で複素数について習うときに、仮定に基づいている概念が実際の演算に使われたりしてモヤモヤしていた。信じることを前提にしなくても、実際虚数が作れることをSwiftで試演。Swiftでシンプルに書けて、UIViewで表示できる。見てると美しい。まさに「神のクレープ」

シークレットセッション 佐々木 海
シークレットにつき内容は公開しない。

Lightening Talk

Swiftでアプリを開発した体験記 杉上さん 資料
知的好奇心を刺激するニュースアプリ、Sioriをリリースした。その開発の振り返り。Swift発表を見て、アップルの本気度を感じた。プロジェクトの半ばで、Swiftの全面採用が決まった。Swiftの良いところはやりたいことがよく書けて気持ちいいところ。

オプショナル型 長谷川智希さん 資料
Swiftで、Stringにnilは入らなくなった。nilも文字列も入れたい場合はオプショナル型として宣言しないといけない。その場合Optional<String>をつける。それを省略したのが?である。元の型として使う場合アンラップし、それを強制的にやる場合につけるのが!である。その他にも色々なアンラップの形がある。なんとなくに?や!をつけるのではなくて、きちんとロジックを理解した上でつけないと混乱してしまう。

SceneKit dsgarageさん
3Dモデルのためのキットの紹介。今まで主にUnityでゲームの開発をしてきたが、SceneKit、SpriteKitなどの便利なキットを使うと3Dモデリングが簡単になる。大変なC++実装をするより、ゲーム開発においてこのようなキットを使うと良いはず。

swift-jsonについて dankogaiさん 資料 / ソースコード
swift-JSONではなくswift-jsonである。SwiftでJsonの取り扱いを簡単にできるハンドラー。書き方もSwift風で読みやすく、タイプチェックやエラーハンドリングも簡単。

Flat Designの裏にあるもの nakajijapanさん 資料
iOS6まではスキュモだったが、iOS7ではフラット化。ただ、Appleは自分たちのデザインをフラットデザインとは呼んでいない。あくまでもiOSのためのデザイン、コンテンツを重視したデザインとしている。デザインは人々の進化や習熟度によって変わってきた。デザイン思想としてMaterial Honesty, Minimalismを紹介。「Material Honesty」という考え方は、工業製品は素材を重視し、装飾ではなく機能に従ったデザインをすべきというもの。

カスタムキーボード niwatakoさん
外部接続のデータスキャン機構をSDKを使わず他のアプリに提供するために、カスタムキーボードを使ってみた。カスタムキーボードでバーコードを入力し、その結果をSafariに渡して検索するアプリの紹介。カスタムキーボードでゲームするなど、無限の可能性があると思う。ただAppleの審査が通るかどうかはまだわからない。

参加してくださったみなさん、ありがとうございました。そしてスタッフのみなさん、お疲れ様でした。また社内・社外で面白い話が聞けることを楽しみにしています。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

2014年10月15日水曜日

UI Crunch #1

スクーの講義、【現役クリエイターから学ぶUIデザイン講座】UI Crunch #1 渋谷ヒカリエから生放送!を受講してみました。実際のイベントは渋谷ヒカリエで行われていて、その実況が生中継されるという形でした。DeNAとGoodpatchといった、IT業界のUIデザインを牽引しているといっても過言ではない両会社のコラボということで、みんなの反応もとても熱く、70人の定員があっという間に埋まる盛況っぷりです。

内容としては、プロダクトのゴールとは何か?といったモノづくりの本質を問うような発表から、iOS8対応のTipsといった具体的で実務に役立つものまで幅広く、様々なトピックスについて考えられる機会になって良かったと思います。これからもUICrunchは月一度行われるらしいので、今後の話題の広がりも楽しみです。それぞれの発表内容を簡単に整理してみました。

開発現場におけるデザイナーの生存戦略 - 坪田 朋 UI Designer(DeNA)

デザイナー不要論が浮上し、みんながざわついている。確かにBootStrapのようなプロトタイプが簡単に作れるフレームワークや、クラウドソーシングの活用が明らかに増えていて、デザイナーの既存の仕事が奪われている。しかし、プロダクト全体のことを考えられるデザイナーの希少価値は依然として高い。代替可能なCSSを書くとかグラフィックを作成するデザイナーから、Sketch3, AfterEffects, Prottのようなツールを使いこなしてプロトタイプまで作成できる代替不可能な人材にシフトしていくことが今後のデザイナーの生存戦略ではないか。

発表資料

基準について知る - 貫井 伸隆 Chief UI Designer(Goodpatch)

ル・コルビュジエという建築家が考案した人体の寸法に基づいた数例であるモデュロール(Modulor)というものがある。例えば国立西洋美術館がモデュロールに基づいて設計されていて、身長183cmの人が腕を伸ばすと天井に手が届く。建築物だけではなく、全てのプロダクトが人体のサイズにあわせて作られている。アップルが提示している最小の「押せるサイズ」の44pxというのはあらゆるアップルプロダクトのサイズの基準になっている。@x1, @x2, @x3と解像度が増えて、デザイナーの仕事が大変になってきているが、個別に対応するというよりは全てのデバイスに適用できる「Universal Interface Design」が大事となってくるだろう。

AfterEffectsを使ったインタラクションデザイン - 増田 直生 UI Designer(DeNA)

実装して欲しいアニメーションを「かっこよく」「気持ちよく」などのニュアンスで伝えてもなかなか上手くモノがあがってこない。AfterEffectsを使ってデザイナーがインタラクションまで作ることで、動くプロトタイプを見ながら具体的なディスカッションを行うことができる。デザイナーがモーションのプロトを作ることで、デザイナーの仕事は増えるが、プロジェクト全体の効率はあがる。使い方はFlashと良く似ている。

誰のためのUI? - 藤井 幹大 UX Designer(Goodpatch)

モノづくりのゴールを実現するフレームワークとして「ユーザーの体験」「ユーザーの行動」「存続可能性」「モノ」のサイクルがあると考えている。この四つの要素に紐付けて、色んな指標も決められるし、UIもこのフレームワークベースで考えることができる。例えば、ユーザーの体験を高められるUIとは?存続可能性を高められるUIとは?といった追求ができるようになる。何を重要視するかは個人の価値観が現れるところでもあり、モノづくりにおいて職種ではなく責任でこの四つをカバーすべきである。いかにこのサイクルが機能するチームになっているかが重要。

発表資料

iPhone6/iOS8 デザイナーが知っておくと便利なTips - 沖津 貴智 Engineer(DeNA)

- iPhone6に対応してるかどうかはステータスバーのサイズを見るとわかる。対応済みの場合は高さがその他のiPhoneのサイズと同じ。
- iPhone6 plusは1920×1080の401ppiとなっているが、実際は2208×1242のサイズを0.87倍にしているので、モック作業の際は2208×1242でやっておくと良い。
- 解像度が増えたがpdfファイルを使ってVectorイメージを使うことができる。生産性が上がるのでできるだけpdf対応を検討すべき。
- LaunchScreenも解像度別に分けず、Xcode6から一つのファイルにすることができる。
- iPhoneの動画が今後App Previewsという名前で録画できるようになる(OS X Yosemite + QuickTime)。
Xcode6, iPhone6, iOS8対応、大変だがやり方は工夫できる。頑張りましょう。

発表資料

Prottのデザインプロセス - 小林 幸弘 UI Designer(Goodpatch)

Flintoを使うことでGoodpatchのデザインプロセスが圧倒的に変わった。Flintoのようにスケッチから素早くプロトタイプを作成できて、チーム内に共有してコメントをもらって開発の早いフェーズからフィードバックをもらったり、背景画像を設定してアプリの世界観を伝えたりすることができるプロトタイピングツール、Prottを作ってみた。今後はワイヤーフレーム、遷移図、複数ジェスチャー、自由配置などにも対応し、プロトタイピングに役立つツールとしていきたい。まだスタートラインに立っただけという認識。

私は業務としてワイヤーフレームを作成することが多く、それに最も適しているUXPinを愛用しています。これからは個々の画面を設計することも大事ですが、画面から画面への遷移、また画面内のUIコンポーネントの操作を行うときのモーションを考えることが重要になってくると思います。Prottはトランジション機能も提供しているとのことなので、使ってみて使い勝手が良ければ乗り換えることもあるかもしれません。

今後のUICrunchはDeNAやGoodpatchに限らず、色んな会社の人にも参加してもらいLightning Talkなどやっていくらしいです。今回のようなかしこまった感じではなく、もっとゆるくやりたいとのこと。UIデザインに関わる全ての人にとって有意義で楽しい場と成長することを期待しています。

2014年10月12日日曜日

UX Book Club - Observing the User Experience

「Observing the User Experience」読書会 facebookイベントページ

今回で3回目を迎えたUXAnalytics Lab主催の読書会に参加してきました。この読書会には、様々なバックグラウンドを持ち、違う環境で働いている方々が、UXのことを理解して勉強したいという共通した動機で集まっています。読書会は主催の若狹さんが洋書を選び、パート分けしてそれぞれの担当を決めて、内容の要約や感じたこと、関係する事例の紹介などを持ち寄って発表するという形です。日本語の本を読むより、英語の本を読むことでより前後文脈を考えたり悩んだりすることで理解が深まるという効果があります。

今回はみなさんの発表資料のクオリティがとても高く、発表も聞いて分かりやすくて非常に勉強になりました。元々の本の分量が膨大だったため、発表だけでかなり時間がかかってしまい、みんなが現場で体験したことや独自の意見などをぶつかり合う時間が足りなかったことは少し残念でしたが、UX Practitionerとして押さえておくべきものが網羅されていると言っても過言ではない本書の内容を一通り全て学ぶことができたことで、強い達成感を得ることができました。

発表内容を章の順番に沿って整理してみました。

PART I
Why Research Is Good and How It Fits into Product Development

Chapter 1 Introduction (若狹さん)
LEGOから得られるレッスンが六つある。コアオーディエンスを良く知ること、メインユーザー層を超えたユーザーニーズを知ること、リサーチで得たものを建設的に変換すること、ユーザーリサーチから全体的な結果に繋げることなど。コアオーディエンスである子供たちに向けた商品に注力したのはもちろん、一緒に遊ぶ大人にもアピールする商品を創り出し、成長によって難易度を変えて達成感を強くしていく仕組みも導入するなど、ユーザーリサーチによって具体的な効果を出すことができた。

Chapter 2 Do a Usability Test Now! (若狹さん)
Nano-usability Test(一人にプロダクト・サービスを使わせて観察、分析)など、今すぐはじめられるユーザビリティテストに取り組むべき。本田宗一郎の「やってみもせんで、なにがわかる」と通じるところがあると感じた。

Chapter 3 Balancing Needs through Iterative Development (若狹さん)
Iterativeな開発とWaterfallな開発で、それぞれ開発のフェーズによって向いている手法と向いてない手法がある。例えば、何を作るかを検討する段階ではインタビューやサーベイが有効、一通り動くものを作ってからはユーザビリティテストやサイト解析が有効。開発のフェーズや環境によってFlexibleに適用する手法を選ぶべき。

PART II
User Experience Research Techniques

Chapter 4 Research Planning (平野さん)
どんな小さなプロジェクトであっても、計画が必要。ゴールを決めてから、それにあわせてスケジュールやバジェットを決める。ゴールを決めるときは、社内社外を含む様々な立場の人にとってのゴールをまず確認し、そのゴールにImportance(重要度)やSeverity(深刻度)を基準にして点数をつけて優先順位を明確にしていく。

Chapter 5 Competitive Research (平野さん)
競合調査はタイミングを見計らってやるよりは、常に続けることが望ましい。特にリデザインする前に、課題解決のために競合を調査分析するのはとても効果的である。Tier1競合(ガチンコでかぶっている場合)とTier2競合(同じカテゴリーだけど、Tier1ほどかぶってない場合)、ニッチ競合(一部だけがかぶっている場合)という分け方をすると比較しやすい。

Chapter 6 Universal Tools: Recruiting and Interviewing (岩﨑さん)
リクルーティング(被験者募集)やインタビューはどちらも重要。どちらかを間違えるとその後のプロセスが全て狂ってしまう。特にスクリーニングが上手く機能してなくて、不適切なユーザーが被験者として選ばれてしまうことは大変深刻な事態。リクルーティング仕組みを大々的に見直さないといけない。ユーザー像をテンプレート化しておくと色々と利点がある。インタビューをするときは最初広い質問をして、徐々に具体的な質問に変えたあと、最後振り返りまとめあげると良い。モデレートするときは中立的なポジションを守ることが重要。

Chapter 7 Focus Groups (岩﨑さん)
元々マーケティング技法。座談会と訳しても良いかも。数人希望のグループディスカッションを数回実施して、プロダクト・サービスに対する感想や使われ方などを収集する方法。ターゲットを選定し、スクリプトを作成する。準備から音声データ起こしまで、やることがたくさんあるので、できるだけ人に任せられることは任せてしまう。例えば、モデレーションに営業職の人を活用したり、データ起こしを社外に頼むと良い。スクリーニングのプロセスをしっかり作っておいて、事前に関係者の同意を得ることが重要。

岩﨑さん発表資料 (Chapter 6, 7)

Chapter 8 More Than Words: Object-Based Techniques (ソヨン)
人々の言葉で表せない感情、希望などを引き出すための方法として写真を用いる方法(Photo Elicitation)とコラージュ、マッピングがある。これらの手法はゴールがまだ調整可能である開発初期に、ユーザーのニーズを明らかにするために実施すると効果的。出す情報が決まっていて、出し方に迷っているときはカードソーティングが有効。人々が情報をどう組織して分類するかのロジックを把握することができる。

Chapter 9 Field Visits: Learning from Observation (ソヨン)
フィールドリサーチは、ユーザーがプロダクト・サービスを最も自然な形で使っている場所に行って観察すること。プロダクト・サービスが人々の生活にどのように溶け込んでいるかを知ることができる。

私の発表資料 (Chapter 8, 9)


Chapter 10 Diary Studies (大谷さん)
ユーザーに体験の内容を記録してもらうことによって、日常生活の中でプロダクトがどのように使われているのかを知ることができる。紙に書いてもらう方法とオンラインで投稿してもらう方法があり、両方メリットやデメリットがある。最近はRET手法と呼ばれるTwitter投稿とメール作成をあわせた報告の仕組みも使われている。この方法はユーザーのバイアス(Potential bias/Self-reporting bias)がかかりやすく、それをどう取り除くかが重要になる。また、収集したデータを解析する際に膨大な工数がかかるので注意すること。

Chapter 11 Usability Tests (大谷さん)
タスクやシナリオを設計する時に、ユーザーが普段からやりそうな状況を設定することが大事。モデレーションのテクニックが必要で、ふんわりした回答を掘り下げて生々しい話・個人的な体験にまで持っていくことが重要。

Chapter 12 Surveys (梅澤さん)
サーベイに良いタイミングは、良い質問が思いついたとき。質問は具体的に設定すること。様々なバイアスに注意すること。例えば、クリスマスシーズンにショッピングについての設問をしても、普段とは違う回答が返ってきたり(時間バイアス)、会社員が働いてる時間に質問を投げても答えが返ってこなかったり(持続バイアス)、などなど。結果を分析して、定性調査で補完する。

Chapter 13 Global and Cross-Cultural Research (梅澤さん)
国境を超えてグローバルなリサーチをしたり、違う文化背景を持つ集団に対してのリサーチを行うこともある。謝礼をその国や文化圏にあわせたものにするなど、細かいところに色々気を配らないといけない。本格的な調査をはじめる前に、IDEOのツールキットを使ってエクササイズすると良い。

梅澤さん資料 (Chapter 12, 13)

Chapter 14 Others’ Hard Work: Published Information and Consultants (河合さん)
全てのリサーチをゼロから行う必要はないので、公開されている資料を使ったり、コンサルタントを雇うことも良い方法。netratingsやcomscoreなどが良いサービスを提供している。情報メディア白書を参考することも良し。

Chapter 15 Analyzing Qualitative Data (河合さん)
たくさん集まった定性的データを整理して、パターンを見つけること。方法はたくさんあるけど、目的がしっかりしてないとどの方法を用いれば良いかわからない。目的がはっきりしてないと、UXマップをとりあえず作ったけど活用されないといったようなことが起きる。3Mのポストイットをデジタル化してくれるアプリを使うとデータの整理が楽。

Chapter 16 Automatically Gathered Information: Usage Data and Customer Feedback (中垣さん)
Usage DataやCustomer Feedbackといった自動で集まるデータをどう活用するかはまさにUXリサーチャーの仕事である。例えばA/Bテストを行って、その結果をもって良いデザインを採用することで、CVが上がって、UXが向上されるといったことが起きる。ただ、細かいデータばかりを見るのではなくて、全体への影響なども考えてこれらのデータを活用すべき。Customer Feedbackもあくまでも顧客一人ひとりの意見なので、参考までに活用した方が良い。

PART III
Communicating Results

CHAPTER 17 Research into Action: Representing Insights as Deliverables (中垣さん)
ユーザーリサーチの成果は会社あるいはクライアントにしっかり伝えてこそ意味がある。アウトプットとしてペルソナ、シナリオ、タスク分析ダイアグラム、エクスペリエンス・モデルといったものを提供するとステークホルダーも理解しやすいはず。残念なUXデザイナーの成果はパッと見なんだかいい感じかもしれないが、ステークホルダーを説得できる力を持っていなかったりする。

Chapter 18 Report, Presentation, and Workshops (吉田さん)
成果を報告したり、プレゼンテーションしたり、ワークショップを行うことで会社やクライアントにフィードバックすることもUXデザイナーの大切な仕事である。例えば報告書を作成したり、プレゼンテーションをするときには、要約を持ってきて、それをサポートする内容を添え、最後に証拠やデータを加えると効果的。

Chapter 19 Creating a User-Centered Corporate Culture (若狹さん)
ユーザーリサーチの成果をフィードバックすることで、企業をユーザー中心でものごとを考えるような文化に変えていく。スモールチームではじめてスケールアップしていき、ステークホルダーを巻き込み、リサーチの結果を明白にして、自分(UXデザイナー)がもたらした効果を測定可能な値で提示する。また、ユーザビリティの価格を策定して、自分の貢献度をわかりやすくアピールすることで、ユーザーリサーチの重要性を理解してくれる環境を作り上げること。

Observing the User Experience: A Practitioner's Guide to User Research (Interactive Technologies)